[先輩インタビュー]受託研究という仕事の魅力と難しさ
  
浜理薬品工業株式会社 [博士/研究職]
業種[総合化学/高分子/医薬品/化粧品/農薬/ファインケミカル/無機化学/食品化学]

   

「先輩インタビュー」第十二回では、合成化学を中核技術として、医薬品原薬・中間体、健康食品や化粧品の有効成分の製造でグローバルな事業展開をされている浜理薬品工業株式会社を訪問してきました。
その研究開発部で活躍されている入社3年目のFさんにお話を伺ってきました。






受託研究のやりがいと難しさ・・・

こんにちは。さっそくですが、Fさんが所属されている部署について、教えてください。 

F 当社は受託を含む医薬品原薬などの製造・研究を行っています。研究開発部は実際に製造方法の開発や研究を行っている部門で、私はこの春で入社3年目になりました。メンバーは40人くらいで、1チーム1〜3人くらいで1つの業務に携わります。

具体的にはどのようなお仕事をされているのですか? 

F お客様からご依頼頂いた化合物を工場で製造するための製法開発をしています。まず実験室レベルのスケールで作ってみて、それを実際の工場を動かして数十kg単位で製造する、ということを行っています。

中規模から大規模の製造にかかわる開発に携わっているという事ですね。 

F そうです。ご依頼頂く仕事は、数十kg単位での製造経験がない原薬や中間体の製法を、工場で安定して製造できる製法に改良する内容が多いです。実験室レベルのスケールを単に100倍する様なスケールアップでは、操作も反応も上手くいきません。実際に手を動かして隠れたリスクを探しながら、工場設備を熟知している製造部門の人とも相談して、安全な製法へとブラッシュアップしていく事が私の今の仕事です。

今取り組まれている仕事の中でどんなところにやりがいを感じていますか? 

F まず一つは、お客様の要望にきちんと応えられた時ですね。あとは、実験室レベルで自分が試行錯誤して作成した製法が実際の製造現場で上手く動いているところに立ち会えた時は、うれしさを感じます。

逆に、難しいな、と感じるのはどういったところですか? 

F やりがいと紙一重ですが、難しいのはやはり、品質などお客様が要求されることをしっかりと満たす様な製法を作り上げていくことですね。小さいスケールでは問題なかったことでも大きいスケールでは問題になることもありますし、工場の設備等の問題ですべての要求を満たすことが出来ない時もあるので、その時はお客様と解決方法を検討する必要が出てきます。

なるほど。細やかなコミュニケーションが大切になってくるのですね。 

F  はい、とても大切だと思います。

話が前後しますが、Fさんの大学在学中の研究内容を教えてください。 

F 天然から取れる、ある有機化合物の全合成研究をしていました。目的の天然物はこれまでに誰も作ったことのない複雑な骨格を持っていたので、その骨格をどうやって作るのか?という手法の研究も併せて行っていました。

大学時代は小規模での研究が主だったかと思いますが、会社での中規模から大規模での研究開発に慣れるのは大変でしたか? 

F  そうですね。例えば温度管理ですと、小さいスケールならすぐに水に浸けるなどで温度を下げられますが、大きいスケールでは、温度の上げ下げに時間がかかりますし、時間がかかった事で品質が低下してしまうこともあります。そういうところが、慣れるまでは大変でした。





学生時代のイメージと実際の現場・・・

Fさんは、就職活動を始められた際、どういったことを軸に企業探しをされていましたか? 

F 私は、医薬品をつくる事に何らかの形で携わりたいなと思っていまして、まずはそれをベースに、研究室の先生から紹介を頂きながら事業内容などについてお話を伺って絞っていきました。

先生からのアドバイスなどが重要な決め手になっていた感じなんですね。 

F  そうですね。自分をよく知る方に相談して、意見を求める事も大切かと思います。

そうした中で、この浜理薬品工業へ入社を決めたポイントはどんなところになりますか? 

F 先生から大手企業も紹介頂いたのですが、大手ですと配属された部署によっては自社開発した化合物に対して工場を動かすようなスケールにまで携わることは難しいような印象を受けました。一方、受託研究から工場での製造も行う企業ですと、大きいスケールまで携わることが出来る。私はその点に大きな魅力を感じて、入社の決め手になりました。

実際に入社されてみてどうですか? 

F  思っていた様にやりがいにつながっているなと感じます。

逆に、これは想像していたのと違うな、と感じる点はありますか? 

F 会社に入ったら、大学時代の様に夜遅くまで実験をする様な事はないにしても、実験は毎日やるのだろうと思っていました。ですが、実際に入社してみると、意外にもお客様とのやり取りや、報告書作成、勉強会への参加など、デスクワークも多くありました。実験はテーマにもよりますが、お客様から頂いた製法を短期間でブラッシュアップしたり、製法開発の仕事の際は効率よくデータ取得するなど、実験1つの内容が濃くなりました。

なるほど。実験は効率よく行い、社内外とのコミュニケーションが多く求められるんですね。 

F  そうですね。大学時代は自分一人で研究をしていることが多く、他の研究室の人と話す事がほとんどなかったのですが、今は他部署の人やお客様と話す機会が多く、今ではそれが楽しいと感じています。




コミュニケーションの大切さと難しさ・・・

今振り返って、学生時代のこんな経験が今の仕事に活きているなと感じることはありますか? 

F 研究で得た経験や知識はもちろん活かせていますが、それ以外ですと、私は在学中に学園祭の実行委員をやっていたことがあり、色々な人とコミュニケーションをとりながら一つのイベントを作り上げていく経験をしました。これは、仕事でも周りの人を巻き込みながら作り上げていくシーンに活きていると思います。

Fさんが日ごろの業務で大事だなと思っているコミュニケーション上のポイントは、何ですか? 

F  一番気を付けているのは、自分が何を伝えたいか?相手が何を言いたいのか?をしっかりつかむ事です。学生時代は、考えがまとまらないままに話してしまい、結局上手く伝えきれなかった経験を何度もしましたので、今は話しに行く際は一旦落ち着いて、話すことをまとめてから向かうようにしています。会社では大学以上に色々な化合物や、多様なバックグラウンドを持った方と接しますので、伝えたいことを整理する事はより大切だと感じています。

確かに別分野の人と話をする際、お互いが持っている知識や経験が異なるので、共通理解を作っていくというのは難しいですよね。 

F  はい。当社は、入社して2年目に米沢浜理薬品工業に1年間の研修に行き、色々な部署をまわります。医薬品原薬が工場で製造されている現場を実際に目で見た経験は、とても役に立っています。

Fさんの仕事を通して得た経験から、「こういう学生の方なら浜理薬品工業に合うんじゃないかな」というものはありますか? 

F 「元気で明るい人」だと合うんじゃないかなと思います。元気で明るい人ですとちょっとしたコミュニケーションも取りやすいので、業務も進めやすくなると思います。あとは、どんな小さな事でも、気になったことがあればすぐに周りに声をかけて質問できることも大事かと思います。そういう人ですと、チームとして仕事が進めやすくなると思います。

研究開発のお仕事ではありますが、周りの人と調整しながらディレクションをされていくような業務ですから、そうしたコミュニケーション上のフットワークの軽さというのも大事なのですね。 

F  そう思います。




受託研究の仕事を目指す学生の方へ・・・

最後に後輩に向けてアドバイスはありますか。 

F まずはしっかりと知識の基礎を築いておくことが、一番かと思います。また、私は有機化学の合成系ですが、当社には無機化学や生物化学、薬学など、いろいろな分野出身の方がいます。「この分野は他の人に誇れる」というくらい自分の研究をしっかりとやっていれば、周りの人の役に立ちます。あとは、体力を付けておくべきだなと思います。お客様にお出しする報告書の作成と並行して製造前の小規模の実験、などという事もありますし、製造現場では体力が必要ですから。


本日はありがとうございました。


F ありがとうございました。



【文責:(株)スプラウト 分須弘二】

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